短歌・俳句の相互作用掲示板

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新歳時記七月 [83]
投稿者:[ もぐら ]  投稿日:[ 2009年06月13日(土) 10時44分40秒 ]



黒々と山動きけり、夜の秋。 星野椿

秋立ちてむかうのお山に人はゐぬらしく、黒ぐろ鎮もりゐたり。 もぐら
いつか知らず花散りけり、と知る由もなくしてひたすら山眠りけり。 もぐら


夕顔に、水仕もすみて佇めり。 杉田久女

せうも無き人とゐてする家事万端、せうもなしとぞ思ひけるかな。 もぐら
今宵のみひそと咲きゐる夕顔の白きに、人の秋は来ぬめり。 もぐら


香水の香ぞ、鉄壁をなせりける。 中村草田男

満員の地下鉄にゐて、つけすぎの香水しばしの暴力となる。 もぐら
マスクするは迷信なり、とテレビ言へば、地下鉄ひとりもする人の無し。 もぐら


泳げても泳げなくても、水着着て。 稲畑汀子

ビキニ以後、水着は泳ぐためならで、人に見するがためとなりけり。 もぐら
おばちゃんの生々しきがビキニ着て、何言ふべきかことば詰まりつ。 もぐら


しづかさや、岩にしみ入る蝉の声。 芭蕉

翁、はっ、と睨みてあれば、蝉どもは鳴く声止めたる山の寺かな。 もぐら
千幾段登りし人を嗤ふごとく、蝉どもせせらせせらと鳴くなり。 もぐら


市中はもののにほひや、夏の月。 凡兆

東京駅。食ひ物ばかりの匂ひして、新幹線の無臭慶ぶ。 もぐら
駅ナカに喰ひ物いろいろ売りをりて、駅弁のみなりし昔偲ばゆ。 もぐら


象潟や、雨に西施が合歓花。 芭蕉

しづしづと降り来る雨に濡れゐるがごとくに、合歓は笑みゐたりけり。 もぐら
くれなゐは梅雨のみどりの染めゐるがごとくに、あはれ涙するなり。 もぐら

新歳時記六月 [82]
投稿者:[ もぐら ]  投稿日:[ 2009年05月31日(日) 22時14分45秒 ]


茅の輪くぐり、星降る夜空詣でけり。 星野立子

吉か凶か知らねど憂き世の輪をくぐり、くぐりて七十度を経にけり。 もぐら
茅の輪ひとつひとつ、とくぐり、あと幾つくぐらばあの世へ行かむか、と思ふ。 もぐら


新任の、宿屋住居の籐椅子かな。 唐沢樹子

幸いに端渓がらぬ主ゐし、宿屋にゐたりし新任の頃。 もぐら
宿屋ゆゑ、天扶羅そばなど出るはずもなくて、無聊の夕食なりけり。 もぐら


清流に、つき出し二階、青簾。 星野立子

青すだれ越しの流れは清けれど、勘定書は恐ろしかりけり。 もぐら
ひたすらに酔ひたりけるは良けれども、賀茂の川音も聴かずい寝たり。 もぐら


夏足袋のよく洗はれて、よく継がれ。 景山筍吉

継ぎ継ぎのあまりに原型を留めず、となりける足袋を今朝もまた穿く。 もぐら
穴開きし靴下捨つるに惜しくして、継ぎさへもせず一年あまり穿く。 もぐら


出嫌ひも、夏帯しむるまでのこと。 原菊翁

しゃっきりと帯締めたれど、なほも出るをためらひにける午後の暑さは。 もぐら
少々の用などその内、なになにと言ひやりにける暑さなりけり。 もぐら


夏草や、兵共がゆめの跡。 芭蕉

破れ兜冠りし大将、今どこに如何なる夢を見ゐるか知らず。 もぐら
山河あれど秋草なべて露置きて、亡びし邦こそあはれなりけれ。 もぐら


満目の緑に坐る、主かな。 高浜虚子

障子あけて座敷は緑に埋まりけり。客もあるじもその中にあり。 もぐら
見合ひとて来し座敷には、一輪の花また万緑に埋みてありけり。 もぐら


蝙蝠や、川をはさみて皆裏戸。 松永寄涛

何処より出でしか知らず蝙蝠のひとひら、運河の夜を呼びけり。 もぐら
何処とも知らず鰻の匂ひきて、蝙蝠さへも焼きて喰ひたし。 もぐら


蚊遣火の煙の末を、ながめけり。 日野草城

蚊は手足しびれて、人はかゆき忘れ、蚊取り線香に夏過ごしけり。 もぐら
殺すにはあらず、翅をし麻痺させてしまふ線香あはれなりけり。 もぐら


おもしろうて、やがてかなしき鵜舟かな。 芭蕉

伝統の鵜飼見物良けれども、勘定誰が払ふか知らず。 もぐら
鵜飼済み、あとカラオケと誘はるる身はし鵜なりと思ひけるかな。 もぐら


風流のはじめや、奥の田植うた。 芭蕉

此処かしこ徘徊めきて歩み来れば、陸奥わたりは田植ゑ頃なり。 もぐら
田植歌、よくよく聴けば、最近のSMAPらしきが面白きなり。 もぐら


大学を出れば、肩下げ梅雨の道。 松本巨草

学卒の資格は派遣には効かず、明日の飯ばかり心配するなり。 もぐら
就職の十分条件ならずして、必要条件に過ぎぬ大学。 もぐら


新歳時記五月 [81]
投稿者:[ もぐら ]  投稿日:[ 2009年04月28日(火) 16時13分01秒 ]


山寺に絵像かけたり、業平忌。 高浜虚子

絵姿に幾夜寝覚めぬ思ひせし。義清どのの春の曙。 もぐら
ちちははの絵すがた掛けて、筑紫へと行く兵がこころ悲ししも。 もぐら


麦打の音に、近づきゆきにけり。 星野立子

麦を打つ男にお世辞を言ひ言ひて、飯ありつかむとふ下心あり。 もぐら
さつき空ひたすら蒼く、打つ麦はひたすら黄金に、信濃豊科。 もぐら


いざ共に穂麦食らはん、草枕。 芭蕉

我が路銀少なくなりて、犬餌の残飯にさへまなこ向きけり。 もぐら
お情けがままなる伊勢へ抜け参り、やうやく此処は松坂、と言ふ。 もぐら


彼のことを聞いてみたくて、目を薔薇に。 今井千鶴子

幾十年前の元彼、なにとやら理事長となり、逮捕されつ、と。 もぐら
それぞれに仕事家庭を持ちゐし、と顔を見合はす初恋同士。 もぐら


僧になる子の美しや、芥子の花。 一茶

托鉢に世すぎするこそかなしけれ、五穀稔りの薄きこのころ。 もぐら
天辺を清げにくるりと丸めては、とと様お世話になりましたなど言ふ。 もぐら


清瀧や、波に散込む青松葉。 芭蕉

しづしづと谷川は行き、われらしばし人ゐぬ岩にて抱き合ひゐたり。 もぐら
くれなゐの散りゆくままに、清滝のふたりの何やら散りしとぞ思ふ。 もぐら



不二ひとつうづみ残して、わかばかな。 蕪村

いづくよりかかる光の照るならむ、右も左も若葉なりけり。 もぐら
富士が嶺のなほも白きを恨みにて、甲斐も駿河も若葉なりけり。 もぐら

からから、と祭帰りの人通り。 星野立子

やうやくに人声絶えて、祭りしゐし境内蒼き月ばかりなり。 もぐら
からころ、と嬉しきことのありしならむ、浴衣の裾の歩み行く見ゆ。 もぐら


御手打の夫婦なりしを、更衣。 蕪村

御手打の、串刺しなどと物騒を言はれしかども、なほ夫婦なり。 もぐら
夜逃げせし折持ち出せしお召見て、昔の苦労を思ふなりけり。 もぐら


娘とは嫁して他人よ、更衣。 星野立子

衣装箪笥半分ほどの中身持ちて嫁したる娘よ、少しは返せ。 もぐら
嫁ぎ上手、貰ひ上手の娘ゆゑ、箪笥の中身のあらかたは無し。 もぐら


牡丹散て、うちかさなりぬ二三片。 蕪村

くれなゐは雪に優るとは言はねども、牡丹の紅にこころ融けけり。 もぐら
人知らで牡丹知る、とふ酣の春はし、やうやく庭に来しかな。 もぐら

新歳時記四月 [80]
投稿者:[ もぐら ]  投稿日:[ 2009年03月30日(月) 11時57分46秒 ]



山伏は貝を吹くなり、鐘供養。 高浜虚子

梵魚寺は、鐘楼なれど太鼓ありて、撞くと叩くの違ひ、どんどん。 もぐら
何や知らぬ祭りをしゐる寺の庭に、黒犬のゐて、喰はるるや知らず。 もぐら


行春や、撰者を恨む歌の主。 蕪村

民主的に互選とすれば良けれども、それではレベル下がるばかりなり。 もぐら
選は所詮、選者の趣味に尽きたり、と我はし我の歌うたふなり。 もぐら


草臥て、宿かる比や、藤の花。 芭蕉

ゆるゆると脚倦み果てて、夕暮はこころ恋ひしき藤の宿かな。 もぐら
ひたすらにこころふたがる旅ゆゑに、藤の宿さへ見過ごしにけり。 もぐら


とらへたる柳絮を、風に戻しけり。 稲畑汀子

柳絮ひとつ黄沙に載せて、日本の弥生の空へ帰さむ、と思ふ。 もぐら
西山のくれなゐ、西安黄沙ゆゑ、と思へば、これまた悠久なるなり。 もぐら


古池や、蛙飛こむ水の音。 芭蕉

我もまた飛び込みたけれど、蛙どの、憂き世にしがらみ多くありけり。 もぐら
きのふ誰の飛び込みたるかは知らねども、古池けさは濁り増されり。 もぐら


痩蛙、まけるな。一茶是にあり。 一茶

日本は勝つとも我はこけにける、春なほ浅き草相撲かな。 もぐら
負けてあれど、あはれと言はるることの無き草相撲にも春は来にけり。 もぐら


猫の子の膳に随きくる、旅篭かな。 松藤夏山

食欲の細しと見てしか、猫どのは我が膳ばかりねらひ来るなり。 もぐら
ランチとて塩多ければ、猫どももまたぎて通る道の駅かな。 もぐら


病み抜きて、春愁いつか遠ざかる。 高浜年尾

病み枕重るがままに、いつか知らず花の便りも遠ざかりけり。 もぐら
こころ病みて、え知らぬままの早春の微風を今朝は知りにけるかな。 もぐら


春眠のさめて、さめざる手足かな。 稲畑汀子

悪しき夢を見しゆゑ、覚むれど頭熱し。風邪を引きし、と思ひけるかな。 もぐら
悪しき夢を見で覚めたし、と思へども、うつつに増して悪しき夢あり。 もぐら


春風や、堤長うして家遠し。 蕪村

くだくだと詮なきことのみ思ひ来れば、千里も近し、と思ひけるかな。 もぐら
甘酒を売らむとしては長堤を、春祭たつ宮へと急ぎつ。 もぐら


菜の花や、月は東に日は西に。 蕪村

言ひ言ひて言ひ足りぬことなほありて、遠峰に夕陽は沈むなりけり。 もぐら
菜の花に桃など添へて、幸薄き娘がことを思ひけるかな。 もぐら


何事ぞ、花見る人の長刀。 去来

花見には酒幾許か売らむとて、朝より冷雨に泣きにけるかな。 もぐら
鉄砲をどんと打ち掛くる無粋なる人ゐて、山の花見冷めけり。 もぐら


奈良七重、七堂伽藍、八重桜。 芭蕉

奈良いづこ、からくに何処、と思ふにも、変らぬ八重の花ぞめでたき。 もぐら
昔ゐし邦にたぐへて八重桜、咲き出しけるけふぞ嬉しき。 もぐら


花の雲、鐘は上野か、浅草か。 芭蕉

花も王子、狐も王子、と思ひつつ、カップ麺すする飛鳥山かな。 もぐら
上野にも浅草にても職なくて、きつね蕎麦喰ふ花の雲かな。 もぐら


五六本よりてしだるる、柳かな。 去来

我もまた風吹くままに生きたし、と思へど、柳にあらぬ身ゆゑに。 もぐら
佐保川にあらねど、艶なるすがたして、風になぶらるる美女柳かな。 もぐら

伊藤園新俳句大賞18-2 [79]
投稿者:[ もぐら ]  投稿日:[ 2009年03月18日(水) 17時22分31秒 ]



伊藤園新俳句大賞18-2

ケーキでて、ダイエット開始明日に変更。 西村瞳子

塩ケーキばかりがゆゑに、ダイエットなどと言はで痩せにけるかな。 もぐら
塩依存なれば、あの味この味、と言ふばかりにて食材忘る。 もぐら


しゃぼん玉、上がって下がって私かな。 酒井郁果

しゃぼん玉膨れ膨れてけふはけふ。はじけはじけて明日は明日なり。 もぐら
知らぬ間にはじけ飛びたるバブルゆゑ、シャボン玉など誰も知らずも。 もぐら


ふるさとは、今も昔も空広し。 田中悠真

ふるさとにありにし家も毀たれて、広かりし庭、いよいよ広し。 もぐら
ふるさとは思ひのほかに広かりき、と豊島区三畳一間にて思ふ。 もぐら


硬く張る、バイト帰りの姉の肩。 高橋由樹子

リストラにおびえ暮せし日々尽きて、安き時給に肩はこるなり。 もぐら
ハローワーク通ひ、ことのほか疲るる、と再就職の気は萎えにけり。 もぐら



伊藤園新俳句大賞18 [78]
投稿者:[ もぐら ]  投稿日:[ 2009年03月07日(土) 11時21分03秒 ]

伊藤園新俳句大賞18

ケーキでて、ダイエット開始明日に変更。 西村瞳子

ケーキケーキ有り難がりて喰ふやうになりて、塩の不感症となる。 もぐら
ひと口に腹痛むなる毒ケーキ、平気に売りゐるケーキ屋憎し。 もぐら


しゃぼん玉、上がって下がって私かな。 酒井郁果

シャボン玉。私のやうに舞い上がり、私のやうにデリケートなり。 もぐら
シャボン玉、飛んではじけて大空は、いつも通りとなりにけるかな。 もぐら


ふるさとは、今も昔も空広し。 田中悠真

ふるさとに追ふべき鰻は今絶えて、小豚釣り堀道路となりけり。 もぐら
鰻いづこ、小豚いづこと思ふにも、やま川共に記憶のみなり。 もぐら


硬く張る、バイト帰りの姉の肩。 高橋由樹子

怪我のゆゑか練習ゆゑかは知らねども、右の肩、今朝より痛みけり。 もぐら
呑みしゆゑ、と思ひはせねど、心臓と肩はし、今朝よりゆゑ知らず痛し。 もぐら

新歳時記三月 [77]
投稿者:[ もぐら ]  投稿日:[ 2009年02月28日(土) 21時28分21秒 ]


其角忌や、あらむつかしの古俳諧。 加藤霞村

古ごとを忘れし人は、新しきことは賢きことなりと言ふ。 もぐら
歌とふは、新しきゆゑに佳し、といふことの言ひ得ぬ人の業なり。 もぐら


野外劇はじまる。ミモザ降る下に。 星野立子

良くみればミモザの黄金の降るままに、我が幼子は一歳となる。 もぐら
黄金色のミモザの花の散るころは、幼き頃の妻し思ほゆ。 もぐら


よく見れば、なずな花さく垣根かな。 芭蕉

十二里を歩み疲れて腰下ろす、夕焼け畦ばた白なずな花。 もぐら
きのふまで咲かざりけり、と思へどもけふはし雪融け水は温かり。 もぐら


虎杖や、狩勝峠、汽車徐行。 星野立子

狩勝は鉄道史のみ重くして、今ただトンネルの闇に過ぎたり。 もぐら
釧路からのフェリー、RORO船となり、苫小牧回り。面倒となる。 もぐら


山路来て、何やらゆかしすみれ草。 芭蕉

いぬのふぐり薄碧色にかわゆくて、早春、吾子は一歳となる。 もぐら
かなし、とのみ思ひし時は打ち過ぎて、今憎らしき娘なりけり。 もぐら


由布越えのバスより降りし蕨がり。 中村山思郎

温泉の湯気にて由布岳さへも見えず、我一人乗せバスは盆地へ。 もぐら
ホテルバー、呑みて転びて腰を打つ。温泉治療、何のためやら。 もぐら


まま事の飯もおさいも、土筆かな。 星野立子

土筆んぼ、二本ならべて、夕食に秋刀魚焼きゐし良妻ゐたり。 もぐら
娘今は十二歳をし越えたれば、本物秋刀魚を焼きゐる秋かな。 もぐら


張り合ひのある日、なき日や草を摘む。 星野立子

草摘みしころの幼きを思ひつつ、あはれ今年の春は老いけり。 もぐら
淡雪のいまだし融けぬ飛火野に、紫染めてし人し思ほゆ。 もぐら


高麗船のよらで過行く、霞かな。 蕪村

ウォン安を目当てに釜山行きの船、賑はひけるこそめでたかりけれ。 もぐら
やうやくに円安の波寄せ来れば、韓国旅行も急ぐべきなり。 もぐら


落ちざまに水こぼしけり、花椿。 芭蕉

南より吹き来る温きに伸び伸びとせしにや、椿、花落としけり。 もぐら
受け兼ねてはたりと落つる花椿、伊豆のみなとに春の雨降る。 もぐら


菜めし炊き、誰にも気がねなき暮し。 田中一石

田楽に菜飯を食ふとふこと忘れ、坊ちゃん読みて思ひ出づるかな。 もぐら
豆飯を有り難かりとふ昔なれど、今は甘し、と思ふのみなり。 もぐら


フランスの女美し、木の芽また。 高浜虚子

巴里なれど、メトロにフランス女性見ることの少なき、きのふけふかな。 もぐら
自己主張、フランス女性よりも強き、のだめは世界標準と思ふ。 もぐら


春雨や、ゆるい下駄借す奈良の宿。 蕪村

我秀才なれば、しばしの春雨に、緩き下駄履き奈良を歩まむ。 もぐら
鹿どのに煎餅ささげて、健脚を代りに欲しき奈良の旅かな。 もぐら


雲雀より上にやすらふ、峠かな。 芭蕉

闇空の何処ゆ白きの落つるらむ、一人身つらき浅き春かな。 もぐら
冬の邦ゆ逃れ来たりし峠なれば、嬉し、とドレミの歌くちずさむ。 もぐら


父母のしきりに恋し、雉子の声。 芭蕉

母の下に十数年はありしかど、妻とは既に三十年越えたり。 もぐら
母眠る奥津城雪に埋みたらむ、いつしか四十二回忌を越ゆ。 もぐら


坐りたる所に遠く、春火桶。 星野立子

花寒、と師匠のたまひ、弟子共はいづれが季語か、と迷ひつるかな。 もぐら
句をひとつ纏め兼ねてし春寒の吟行、つひに熱燗に果つ。 もぐら


水ぬるむ、蘇州の朝の市、人出。 佐土井智津子

かく薄き刺繍の金魚は融け出でて、太湖に到る春の雨かな。 もぐら
虎丘にもはや獣の影もなく、十三万万中国人民。 もぐら


降りくらし降りくらしけり、春の山。 一茶

隣村雨降る音す、我が里は未だ淡雪融けずゐたるに。 もぐら
麓村より遅き春登りきて、我が山里も薺咲きけり。 もぐら


春雷や、女主に女客。 星野立子

春雷も佳き季題なり、と師匠言ふがままに、怖るることも叶はず。 もぐら
やうやくに辿り来ぬれば、師匠宅閉ざされ、春の雷ひとつ。 もぐら


草の戸も、住み替る代ぞ、雛の家。 芭蕉

をんな雛のかほのかはらず可愛ゆくて、桃の節句は嬉しかりけり。 もぐら
師匠往にて、男雛女雛の可愛ゆげに帰り給ふを待ちゐたりけり。 もぐら

サラリーマン川柳2009 [76]
投稿者:[ もぐら ]  投稿日:[ 2009年02月19日(木) 09時56分12秒 ]



12:ヒラで終え、町内会で役員に。 しゅう

元社長なりしがゆゑに、町内会、平なりし会長言ふこと憎し。 もぐら
元社長、町内会を嫌がりて脱会。元平、役員しゐたれば。 もぐら


16:良い上司。見ざる言わざる褒め上手。 部下の気持ち

部下と言はば、上司が如何にあらうとも、真面目に仕事をするを良しとす。 もぐら
褒め上手良けれど、ましてくさし上手人にやさしきもの、としぞ思ふ。 もぐら


22:能あるが隠しっぱなしで、もう定年。 内弁慶の妻

能のある鷹の爪はし、みづからの肉切り裂きて癌となるなり。 もぐら
能のある鷹とし思へど、結局は、能ある豚に過ぎずありけり。 もぐら


33:夢を持て。夢を持ったが夢だった。 気楽天家

夢を持て、としつこく言ひける先生は、如何なる夢を持ちしか知らず。 もぐら
夢にまでうつつのはいり来たりし、と思へば窓より朝の風吹く。 もぐら


44:切れる奴。昔は賢人、今危険。 美瑠句堂

切れさうになったらさっさと切ってしまへ。も一度結び直せば良いのさ。 もぐら
切れるほど線の細きを自覚せず、切れる切れるとのみ言ふ人あり。 もぐら


47:胸よりも前に出るな、と腹に言いう。 えんどうまめ

Bカップなれども腹はDカップ。ついでに尻はGカップなり。 もぐら
腹囲増すほど食欲も増す不思議。単純メタボの症状ではある。 もぐら


59:円高を実感したいが、円が無い。 能少納言

舟恐怖ならばウォンなど安くとも、全く関心無かるべきなり。 もぐら
円高を実感してゐる人は、今口を閉ざしてうはうはしてゐる。 もぐら


68:体調が悪くて、病院明日にする。 元気でナイト

七病のいづれがゆゑに診を乞ふか戸惑ふ、老いの毎日なりけり。 もぐら
何処も痛くなくて目覚めし朝しあらば、幸とし思ふ老いの頃なり。 もぐら


69:送別会、主役が去りて盛りあがる。 一生課長

新部長の廻りばかりに人寄りて、前部長ただ撫然としゐたり。 もぐら
送別の辞をそれぞれに言ひたてて、あとちりぢりとなりにけるかな。 もぐら


78:ぼくの嫁、国産なのに毒がある。 歩人

毒のありし嫁を産地へ突き返す。地産地消また善し悪しなりけり。 もぐら
嫁御すでに賞味期限は切れて、なほ過剰包装産地偽装なり。 もぐら


85:無神経なのに、姑、神経痛。 あいあい

神経を使ひしゆゑの神経痛。姑、小言のおはことするなり。 もぐら
他人様の神経いらいらさする人を、無神経なり、と言ふにあらずや。 もぐら


88:妻が聞く嘘の単位は、バレルなの。 センのヒネりん坊

百バレル以上の嘘つき、死刑とす、とふ裁判員ならばしたしも。 もぐら
最近は原油価格も下がりたれば、嘘のバレルも罪軽くなれり。 もぐら


91:まだ来ない。カネは天下をまわるはず。 ブリ大根

天下回る金と言ふとも、我が村に高速無きゆゑ立ち寄らざるべし。 もぐら
我が近所、交通渋滞ばかりゆゑ、金また廻り来ずとしぞ思ふ。 もぐら


94:玉の輿。乗った瞬間底が抜け。 着ヤセする女

玉の輿に乗り、落ちたりと夢に見て、覚むれば十キロ太りてゐたり。 もぐら
玉の輿のつもりにゐしが、知らぬ間に担ぎ手派遣は切られてゐたり。 もぐら


97:円下げて!ドル上げないで株上げて! 手旗小僧

円高の差益を言はずゐるらしき、輸入業者に税金課すべし。 もぐら
高安にそれぞれ損得あるものを、損損と言ふ声のみ多し。 もぐら


98:ガス抜きに誘ったつもりが、引火させ。 よっくん

おい、課長、辞表とはそもどう書くか、などと部下どもからみ付くなり。 もぐら
辞めてやる、と馬鹿言ひしかば、辞めて貰ふ手間は省けて便利なりけり。 もぐら



第18回伊藤園俳句大賞 [75]
投稿者:[ もぐら ]  投稿日:[ 2009年02月19日(木) 09時54分42秒 ]

第18回伊藤園俳句大賞

参観日、やけにきれいな先生だ。 広澤希美

口さがのなき父母ゆゑにめかし込む、参観日とふは面倒至極。 もぐら
父親が顔かなしきを見しゆゑに、参観日とふを憎み初めたり。 もぐら


母笑う。その顔ずばり福笑い。 荒井祐香

母が笑顔こそ何よりもめでたけれ。おかめ、おたふく、皆天女なり。 もぐら
去年しゐし福笑ゆゑ、眉ひとついづこにも無きがゆゑに笑へり。 もぐら


模様替え、物足らぬ場に冬薔薇。 西田隆

リフォーム屋、任せみたれど、金ばかりぼられて結局元より悪し。 もぐら
壁紙の古びし模様に、新婚の頃の志思ひ出るかな。 もぐら


東京で舞はせてみたき雪女。 久世孝雄

東京へ連れ来たりける雪女、上野の駅にて融けにけるかな。 もぐら
東京は無理、と言ひしかば、新潟の古町あたりに舞はせたりけり。 もぐら


河豚コース、解体新書読むように。 有薗哲也

てっちりを安しと思ひて取りたれば、魚肉は薄く溶けて往にけり。 もぐら
河豚解体、免許要す、を知らぬ如く、近所のスーパー売りゐたりけり。 もぐら





新歳時記二月 [74]
投稿者:[ もぐら ]  投稿日:[ 2009年01月31日(土) 08時51分02秒 ]

新歳時記2月


庭掃除して、梅椿実朝忌。 星野立子

我が庭を覗き給へるみ仏は、紅梅白梅賞で給ふべし。 もぐら
実朝のゐたまひしいてふの葉は散りて、掃くいとま無き秋にぞありける。 もぐら


まん丸に草青みけり、堂の前。 一茶

和尚老い雪掻きし給はずといへど、おのづと生ふる春の草かな。 もぐら
閻魔堂、地震に壊れずありつれど、今朝の寒きに奮ふがごとし。 もぐら


鶯の、身を逆にはつねかな。 其角

やうやうに初音ならひて卒業のときを祝ひて、梅の花かな。 もぐら
鶯の卒業せしが、フランスの音楽院を受験せむとす。 もぐら


紅梅の盛りが、待ってゐてくれし。 稲畑汀子

ロンドンに梅など咲きてゐたり、とは春の帰国の後に思へり。 もぐら
ロンドンゆかへり来たれば、花のころを飛び越し日本は夏にてありけり。 もぐら


むめ一輪。一りんほどのあたたかさ。 嵐雪

梅の香のひそ、と香り来る宵なれば、白雪さへも温くしありけり。 もぐら
くれなゐをひそと照らして、梅一輪、けふより春、と言ふが如しも。 もぐら


梅白し、まことに白く新しく。 星野立子

梅の花の真白真白に咲き出でて、古樹なれども惚れなほしけり。 もぐら
ひと雨に紅梅咲きて、ひと雨に白梅ひらく春ぞ嬉しき。 もぐら


海苔掻の臑の長さよ、夕日影。 素丸

有明の浅瀬は遠く、けふの海苔の稼ぎも知らぬ冬の暮かな。 もぐら
浅瀬埋めて成りにしビルに棲む人ら、昔の海苔場の姿思はむや。 もぐら


しののめに小雨降出す、焼野かな。 蕪村

野焼きせしきのふを忘れて春なり、と言ふがごとくに小雨降るなり。 もぐら
野焼待つ別府鶴見の扇山、しば降る雪の色に白しも。 もぐら


濡れて来し雨をふるふや、猫の妻。 太祇

しそこなひなりける恋を忘れよ、といふがごとくに春の雨降る。 もぐら
しばし猫も恋など忘れ、温もりに丸まりてゐる春の雪かな。 もぐら


老大事。春の風邪などひくまじく。 高浜虚子

用心のワクチンさへも効かざりて、今年早々肺炎となる。 もぐら
梅のころまで風邪引かずあらむとて、けふも薬に頼るなりけり。 もぐら


関の戸の火鉢ちひさき、余寒かな。 蕪村

暖房の温度制御は、あまりにも一定過ぎにて、冬春を知らず。 もぐら
炬燵火鉢のみなりし頃、加湿器などとふ無駄器具は無かりけるかな。 もぐら


冴返りつつ、雨降る日風吹く日。 星野立子

日差しのみ温くしあれど、西北の風の冷たき如月の空。 もぐら
母の今ゐます浄土は温くあらむ、今朝より春の雨の降りくる。 もぐら


病床の匂袋や、浅き春。 正岡子規

ブーケガルニとふを入れ、葱じゃがいも等フランス田舎の香りするなり。 もぐら
病院のにほひも最近変りけり、クレゾールとふ無くなりたれば。 もぐら


美しく晴れにけり、春立ちにけり。 星野立子

春らしく濡れける空に母やあらむ、などと思ひて命日近し。 もぐら
春の雨に濡れ給ひてし母がこと、如月あまり思ひ出づるなり。 もぐら





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