■月例歌会詠草■
タブ↓ シフトタブ↑
九月歌会詠草
題詠歌「輪」
01:昔なら鼻歌に出る「銀輪」が、環七走る我が物顔で。 mi-ta
02:雨どいを伝はる水の音の輪が見知らぬ地下へしづみゆく午後 かめい
03:お土産は指輪指輪、と言ひしかど、指のサイズを言ふを忘れつ。 もぐら
04:九輪草怪しく咲ける山の端に指切りしたこともう過去のこと みもざ
05:5輪背に日の丸上り行く時の光視覚を刺し涙する タカ
06:これからは一輪車なる地球号60億人サドルにゃ乗らぬ mi-ta
07:秋水に石とんで輪が二つ三つ夏の日のこと一つずつ消える みもざ
08:霧流れ丘には風車輪を描き回してる風の腕見ました タカ
09:前生は猫ならましかば、と思ひても、蛆かも知れぬ輪廻なりけり。 もぐら
10:輪ぢゃなくてサインカーブを描くんだ月は地球を回っちゃいない かめい
八月歌会詠草
題詠歌「涙・泪」
01:そんなこたぁどうでもいいじゃないですか。はかなき老母の背に涙する。 mi-ta
02:幼子は泣きじゃくりつつ舐めており涙も洟も二つながらに タカ
03:世を恨む黒き涙のごとくにも藁にお崩せば蟋蟀散りゆく みもざ
04:涙して良しとは言はねど、涙して悪しとも言はぬ、刻護る神。 もぐら
05:すずめすずめ雀の涙ほどの幸われにもありて朝をことほぐ かめい
06:子の前で涙見せじとくいしばり天を仰いで洟かみたりぬ タカ
07:破れしがゆゑの涙は無くなりて、勝ちしがゆゑの涙ばかりなり。 もぐら
08:涙には慈悲の心が宿るゆえ泣いて流さん恨み辛みを mi-ta
09:たそがれに鴉はまなこふくらませ涙かしらん液状の寂 かめい
10:いさかいのあと夕日射す帰り道泪ににじむ百日紅の赤 みもざ
七月歌会詠草
題詠歌「天の川・花火」
01:天の川に織女となりて待ち居れど私の牽牛泳げぬらしい みもざ
02:いやまだと浮世にしがみつくような赤い火の玉線香花火 mi-ta
03:恋ふべきのゆゑは知らねど、機を織る女工抱きつつ花火揚げけり。 もぐら
04:何時か寝て銀河鉄道の行き先は天の川へハンドルきりて タカ
05:あまるべの鉄橋毀すなら花火ふしぶしに置き火を放つべし かめい
06:ドーンキララ花火消えゆく一瞬の目に焼きつけり愛するカップル みもざ
07:天の川に架空の橋をかけやうと冷たき鉄の杭打ちゐたり かめい
08:しゅるしゅるるねずみ花火があばれだす狙いは猫さ目の前でボン mi-ta
09:よく見んと打ち上げ場所へ近付けば花火の音が腹揺するまで タカ
10:花火揚げやんやの末にじゅと落つる先は、中空天の川なり。 もぐら
六月歌会詠草
題詠歌「落」
01:テーブルの薔薇は夜半にため息を吐くごと匂い床に墜ちたり みもざ
02:追いかけて殺虫剤で吹き落とし血を吸いし罪で蚊は処刑され タカ
03:試験に落ちたる夢みる事多くなりゆく、七十路の春の宵かな。 もぐら
04:石段をかたかたかたとビー玉が落っこちてきて行ってしまった かめい
05:落ちむとて落ちざるものは、上つ枝なる柿の実。落とさむとして落ちけり。 もぐら
06:遠吠えの声などすれば三日月が落っこちさうな長い坂道 かめい
07:どうでもよいことにはあれど某社長落とした十円拾いに走る みもざ
08:カ−ド持ち引き落としては支払いて膨らみ重い財布は昔 タカ
五月歌会詠草
題詠歌「芽」
01:くちなしの葉の芽さみどりむしばみて太りゆく虫喰ってやらうか かめい
02:薔薇を剪り調えながら花の芽の雨滴そのまま白磁鉢に挿す みもざ
03:こころには芽の如きもの出でにければ、それは人恋ひ。春の宵なり。 もぐら
04:恥じらいて天道様が見入るから夜のうちにて若芽膨らみ タカ
05:それぞれに楢の木の芽を眺めをる母とゴリラとひた青の空 かめい
06:発芽する日本の文化世界へと。マンガ、カワイイ、モッタイナイも。 mi-ta
07:何か芽の出でし如きの顔すれど、良きか悪しきか知らぬ吾子なり。 もぐら
08:柔らかな光に刺された里山はホットになりて新芽弾けて タカ
09:年老いた梅さえ付ける花一輪その紅に発芽する吾 mi-ta
10:夜を走り京都鞍馬に荷を下ろす夫への土産は木の芽漬け買う みもざ
四月歌会詠草
題詠歌「開く、咲く」
01:咲く花が蝶も蜂さえ人までも集めてひと時祭りにうかれ タカ
02:望郷の想ひ鮮烈に消すが如く、パリの冷気に八重桜咲く。 もぐら
03:胡麻の花にひらけひらけと呟いて見守るやうにしゃがみこむ人 かめい
04:花散ってソメイヨシノは葉が茂る母は花なり吾は葉桜 みもざ
05:顔のしわ取れば心の花が咲くためしてガッテン肩こりも消え mi-ta
06:ロンドンにをらばあらむ、のこころあれど、雪に紛ひて花海棠咲く。 もぐら
07:「良心」は神の心の反映と胸襟開く友の微笑み mi-ta
08:春日遅々医師検診に胸開く焦る心を恥じらいており みもざ
09:花びらが開きはじめた熱を帯びた線路は風を呼びこむだらう かめい
10:咲き乱れ香り籠もれり空間に破り入りてや盗人になり タカ
三月歌会詠草
題詠歌「ガラス」
01:透明なガラスの器棚の中ミラーボールの光があたる mi-ta
02:突き刺さり色即是空なお光りきりこ細工がガラスの破片に タカ
03:春の日がざわめいてゐる裏窓の青く濁ったガラスの向かう かめい
04:学生らなべて心得ず、そもガラス水に弱し、と講義せしとき。 もぐら
05:火焔びんって知らないけれどとんがって割れたガラスは右翼思想ね かめい
06:いさかいに疲れし心安まむとくもりガラスの部屋にこもりぬ mi-ta
07:ステンド硝子の端より緑光差し込めり何かよい事ありそうな朝 みもざ
08:砕ければ凶器となりて肉を切り仮面のガラスに囲まれており タカ
09:ガラスコップをもちてビール呑む迷信。本場は蓋付陶器にて呑む。 もぐら
10:今日もまた恥を重ねて日が暮れる硝子に写る素顔撫でみつ みもざ
二月歌会詠草
題詠歌「恋」
01:君が演歌歌えば私はハモっているこれが恋というものかしら みもざ
02:二世を契るがための恋と思ふゆゑに、我がひとり身のいのち惜しまじ。 もぐら
03:求め合うはずの貴方は冷たくて恋のハートが宙にふわふわ mi-ta
04:恋しても鶴のようには踊れぬが殻脱ぎ捨ててしみじみ飲もうよ タカ
05:つつがなく月が夜空を満たすとき恋する猫はつつましくあれ かめい
06:初めての恋なればこそすべ知らず手つなぎ黙して浜辺を行き来す みもざ
07:老梅は、なほ春恋ふが如くして、くれなゐ一輪咲き出だしけり。 もぐら
08:手に負えぬ恋に終わりは無きものか求めあぐねて渇愛と知る mi-ta
09:ちかごろの消える氷山恋しくて危うい星にわが命あり タカ
10:かさねおく菊のお皿の絵のうへでごきぶりどもは恋をするらし かめい
一月歌会詠草
題詠歌「初」
01:三日月が海に沈んだ震へをる海にはじめて小便をした かめい
02:あたりめも昆布のおせち食べてから初売りの福袋で目覚まし タカ
03:月めくりの初水天宮にキスと書く初天神は何が書けるか みもざ
04:初夢と思ひしものは、あまりにも現実そのものなりしを哀しむ。 もぐら
05:初富士の稜線のごとさやかなる巫女のかんばせ神殿に見ゆ mi-ta
06:としかさね潰されそうなからだでも初日の出には母手を合わす タカ
07:はじめての死に向きあってごきぶりのかほそきひげは空をまさぐる かめい
08:ビルの谷初荷のトラック走り行き四角い空にアドバルーン浮く みもざ
09:初日記歌のたのしさ伝えかしキー打つ指にこころも弾む mi-ta
10:福袋、三つ四つかかへしおばちゃんの、初笑ひ響く駐車場かな。 もぐら
十二月歌会詠草
題詠歌「踊」
01:きのふまでゐし落ち葉なれど、舞ひて舞ひて舞ひて遥かの西の空かも。 もぐら
02:かんかんを踊るらくだのお噺にあはせてひとりわれも酒酌む かめい
03:窓越しに見れば枯葉の舞い踊り葉擦れの音に心ざわめく mi-ta
04:踊り子の編み笠仮面のようにして秘めた想いも胡弓にのせて タカ
05:一斉に落ちたる木の葉木枯しと恋人のごと舞い踊りけり みもざ
06:ふるさとの神楽も踊りもまれになり生贄の台も朽ちかけたり タカ
07:黄金なすいてふ落ち葉の舞ふがごとき、うつし世ゆゑの人のこころは。 もぐら
08:公園に二人で踊る影一つ見ている瞳は冬の月だけ みもざ
09:かざしもの明るい空に小雪舞ふ亡者の踊りをるかのやうに かめい
10:手に取るも読み終えるのが惜しくなる本の中でも踊れよアムロ mi-ta
十一月歌会詠草
題詠歌「霜」
01:霜を履(ふ)んで堅水至る故事もありその予兆なるか地球温暖化 みもざ
02:遠き日の恋は頬につく干し柿の霜とりくれし彼の唇 みもざ
03:ギイと鳴る御不浄の戸に身を固めほっと一息霜の立つ朝 mi-ta
04:ざくざくと霜柱踏み棒をとる焚き火の中の芋はふけたか mi-ta
05:霜柱踏むとふことの絶えにける、温暖化せし街を哀しむ。 もぐら
06:再びは融くることなき霜を置く身ゆゑに、悲しき年の暮かな。 もぐら
07:出会い求めて霜柱わけ入れば首離れた死骸に突き当たり タカ
08:交わる人の腹の中温度差の霜で隠すまことの探り合い タカ
09:照明の消えたリンクに霜降ればミラクル真央の尻餅の跡 かめい
10:霜柱を踏めば地虫が鳴くやうで冬枯れてゆく野道は楽し かめい
十月歌会詠草
題詠歌「紅葉」
01:足裏が覚えておりし紅葉積む杜の小道を君とあゆまむ みもざ
02:目の置き場いつしか低く探したり二人が憩う紅葉の敷物 みもざ
03:人人の紅葉狩りの遊歩道ふと目立つシャツの柄 豚も行き タカ
04:前菜に添えられし紅葉ひと葉忙中に座し色をも食みて タカ
05:猪も、紅葉の頃には鹿となり、蝶にはならず蛙でどぼん。 もぐら
06:紅葉焚きて温めし酒をちびちびと喉に流せば、老いも天国。 もぐら
07:中庭のもみぢに名札ついてゐてもみぢ二号よと呼びかけてみる かめい
08:もみぢ葉は毛が抜け落ちて赤いけれど風に応へてそよいぢゃいない かめい
九月歌会詠草
題詠歌「穴」
01:洞穴の史跡の柱傾きて流浪の民がズボン干ゐる みもざ
02:山斜面の墳穴の中騒がしいおむすびコロリンの爺(や)がでてきそう みもざ
03:見る怖さ体内の肉も穴あけて採血する血見ることでさえ タカ
04:あの悪事時に責めてるタバコの火落として残る畳の焦げ穴 タカ
05:棒切れで土塀を撫でて歩いたら、あ、穴あきバケツとおなじ響きだ かめい
06:山のあなあなあなあなと連呼して笑うおとなが恐ろしかった かめい
07:もし首相辞めむに賭けし人しあらば、大穴大穴万馬券なり。 もぐら
08:穴に入り隠れたりける大臣をし、褒めてありける我等悲しも。 もぐら
八月歌会詠草
題詠歌「道」
01:敵機来襲に母は避難路間違えり 20年後のその日私は生まれた みもざ
02:山の径一人下りて街に棲む 今その道を子と共に還る みもざ
03:あかときのお稲荷さんの参道は鳥居がシェーをしてる気がする かめい
04:赤い橋のたもとで道は息をする水のにほひの風にひたされ かめい
05:歩み来し道、夏草の中に埋もれ、いづれがまことと分かたずなりたり。 もぐら
06:十年前、汽車走りゐし谷間道、今夏草に閉ざされにけり。 もぐら
07:高み見て道を真直ぐに行くべしとて迷えば立ち止まり尿(しし)もして タカ
08:直線を点線に変えたような道の地割れの奥に魔力の気配す タカ
七月歌会詠草
題詠歌「夏の風物」
01:言っちまえばセクハラだよね我慢我慢俺の中のムシよ 浴衣の娘(こ)よ タカ
02:子が親をあやめるニュ-スに眩暈して風鈴騒ぎすぎて破れ落ちて タカ
03:浴衣着ていい人待っているんですか いいえ団扇で蚊をなだめてるの みもざ
04:浴衣着て団扇片手の男いて腕からませて花火見上げる みもざ
05:金欲し、の心嵩じて、天保銭鋳潰し、ちろり風鈴となす。 もぐら
06:盆の念珠繰りつつ、せめて中の中品にあらむと願ひけるかな。 もぐら
07:天瓜粉でおしろいをした大雨の打ち降る音に囲まれてゐた かめい
08:蚊帳の上は足場が悪くかみなりも猫もごろごろ転んでばかり かめい
六月歌会詠草
題詠歌「葉、流れ」
01:壊れそうゲームの流れ ボール ボール ボール ツアウト満塁ツスリー タカ
02:底の目に川面の落ち葉の葉脈透けて命の名残揺れて浮く タカ
03:つゆしぐれ大地を洗ひ流れゆく忘れ去られた父の日のごとく みもざ
04:ヘッドライト廃車の下に流れ込み兵馬俑のごとき土筆を浮かす みもざ
05:葛の葉に水羊羹載せ、瀧川の流れに浮かべて、処暑は過ぐさむ。 もぐら
06:世を恨むとにはあらねど、柳葉の流るる如くけふもあらなむ。 もぐら
07:葉隠れのでんでんむしにうづまいてぐるぐるまきの雨が落ちてくる かめい
08:楠木の葉裏に雲が吸い込まれもうおそろしく空はからっぽ かめい
09:死の向う側なる場所も結局は生者のものか 笹の舟折る 摂津
10:茶やドミノじやがりこ等を乞ふカード七葉がマコの今の全語彙 摂津
五月歌会詠草
題詠歌「オノマトペ」
01:弟とプップッと飛ばし競った種中の西瓜に頬ずりする タカ
02:体温のやがて果てるも終わりの無い日立の浜の波のサラサラの タカ
03:ち、とすだく虫にも命のあるなれば、むきゃーと叫ぶまた命なるべし。 もぐら
04:こん、と叩く水琴窟と思ひしが、あはれや、狐狸のゐたるなりけり。 もぐら
05:たんぽぽの冠毛ふふふふうわりと見よ落下傘草原を行く みもざ
06:ダダッ ズギューン撃ちぬかれたるわが胸に君の熱き手銃創をふさぐ みもざ
07:まんまるい石を沈めた日の午後のざぶろんざぶらざぶるをん海 かめい
08:海に毛が生えたとしたらもじゃもじゃの波打際は歩きたくない かめい
09:頭頂につきまとひくるもやもやは虫取り網で取つちまつたさ 摂津
10:長く病む女房の髪の、愛といふ字でも隠れてさうなぼさぼさ 摂津
四月歌会詠草
題詠歌「さくら」
01:かわいいとさくらの下で子供らのケ−タイに付くひとひらの花 タカ
02:花びらに跳ねる光の春のきわみさくらの下春愁はじける タカ
03:もしさくら心しあらば、きのふけふ斯くも寒きを如何にと言ふらむ。 もぐら
04:けふまでも命ありしを祝ひ呉るるこころ嬉しも、さくらよ、さくら。 もぐら
05:さくらさくら昼夜が分からなくなつてしまひたくなるほどの満開 摂津
06:散りながら満つる桜の、億千でありて一でもあるその命 摂津
07:地中にはさかささくらの花が咲き虫どもに翅さやぎはじめる かめい
十一月歌会詠草
題詠歌「紙」
01:紙の色は濃きも薄きもあるものを、見分けのつかぬ人ぞ悲しき。 もぐら
02:一枚の半紙を裂きて丹念にこより縒りいし母の背中よ さよこ
03:秘めた鍵解き紙に書き死を選び子孫の糸切る少年ぞ哀れ タカ
04:UFOはラップの芯の紙筒で見つめる空にあつまってくる かめい
05:わが町の小便小僧はしゃあしゃあと水面(みなも)の塵紙に放水をせり みもざ
06:柔らかき紙よりなれる一本の骨あるこより 母のひと世は さよこ
07:紙なきを気づけど遅しふるさとの駅の便器をしばし温む 皆瀬
08:受け取りの紙一枚に変わったのあのパソコンは回収の身になりて タカ
09:画用紙をやぶいてごらんのっぺらでがらあんとした気持になれる かめい
10:地方紙に私の写真小さく載る大きく写るは富士山のごみ みもざ
11:めずらしく妻は酔ひたり家計簿の白紙のページの語りゐる理由(わけ) 皆瀬
12:紙ならば、思ふことなど書かずある、うすくれなゐのたたう紙かな。 もぐら
十月歌会詠草
題詠歌「安」
01:安心はいつもその地に確とあり東府中に母在りし日は サイキア
02:失いし恋がかえりて笑う声聞こえて親の心安らぐ ミモザ
03:じやんけんに遅出しぱあで負けたとき笑つたあいつ公安かもよ かめい
04:安穏と昼寝貪るわが犬よ主は散歩に足をくじけり さよこ
05:安の家を出づれば荒波板小舟、行方は南か北か知らずも。 もぐら
06:安楽も尊厳もなほ問ひのまま真白き午後に祖父の見るゆめ 皆瀬
07:あなたはね(あんてぃえんつぉんめい)春の日の風のごとくに吾を呼びくれき ゆらゆら
08:秋風は盗人みたい木の葉取りド−ンとあばれ君不安顔 タカ
09:カブ安でマネ−無くして肝(きも)潰しぺちゃんこなオレを秋風叱る タカ
10:もう一度跳べば植え込みあるものを猫は轢かれる安全地帯で ミモザ
11:安からう悪からうまたゆきづりに君の買ひ来るゆふぐれの鍋 皆瀬
12:「瀬戸の花嫁」ながるる駅に婚為さぬ娘思えり安らかならず さよこ
13:安寿塚おく山里に時古りて静かなり有情の光の祭り サイキア
安寿姫塚夜祭によせて
14:安らけく寝むとすれども、鉄砲丼天丼角丼みな喰へと言ふ。 もぐら
15:昏れどきの杏仁豆腐は電気的に不安定です透けたいのでせう かめい
16:ゆらゆらと鳩と人とが歩みゆく今日のおつとめ果たさんとして ゆらゆら
九月歌会詠草
題詠歌「声」
01:蝉の殻切りて刻みて天扶羅に揚げて、じいじい秋の声かな。 もぐら
02:ひとりでもさびしくないよ君がいる声かけたればワンと応える みもざ
03:好みの娘(こ)メディアに出た日思い寝の夢の遊びの奇声を問われ タカ
04:寝転びて見上げてゐたりのびやかに声楽隊がゆく夏の空 皆瀬
05:なき声のトーン変えつつわが家に犬は慣れたり二十日を過ぎて さよこ
06:絶望を論じゐるごとき大声の中央突破が似合ふ教室 かめい
07:民の声なぞ適当に聞き流し、天の声をぞ聞くべかりける。 もぐら
08:わたしだーれと両目をふさいで問う声にお約束なりわからぬとこたふ みもざ
09:歌声を浴びて鳥肌掻きむしり鍵盤叩き潰す曲にわれ泣く タカ
10:夜の海にレザー光線走りたり後の花火にアッと声あぐ さよこ
11:秋の声音をふふみて夕べ風は吹く君の目尻の泣きさうな笑み 皆瀬
八月歌会詠草
題詠歌「光」
01:扇風機の風にふわりと立ち上がるうすき埃よ怠惰なる日よ さよこ
02:夏の昼一人居なれば扇風機の振りにあわせてはいはいして居り みもざ
03:焼けた日はわれには苦く浮き競うビ−ルの泡が冷まし弾ける タカ
04:我々は夏とふものに馴れ過ぎてゐないか。米がとれなくなるぞ。 もぐら
05:白い花は夕顔なのか汗臭き男めがけて蝉が鳴くぜよ かめい
06:葬儀から帰れば残り僅かなり友から暑中見舞い目潤む タカ
07:少し余裕ができて見上げる大空の今年はじめてみる入道雲 皆瀬
08:ひさかたの夏の光のあらばよし。おたまじゃくしののけふは生まれつ。 もぐら
09:「坊ちゃん」の教師の名前覚えがない夏目漱石書いたのかしら みもざ
10:一面の向日葵しんと俯きてなつのひかりを醸してゆけり ゆらゆら
11:夕蝉の声は儚し台風の夜(よ)に生れし子の31年 さよこ
12:星空にうたふかひげのくぢらたちたうたうたる身海によこたへ 皆瀬
自由歌
13:ペンギンを背負ひて歩くをみなごは作り笑ひと言ひて笑ひき かめい
01:捨てられた自転車の雨の雫の錆色の朽ち初めの気動く タカ
02:傷痕のごときを曳きて六月の雨降りをるをただ窓に見つ 皆瀬
03:よだれあめなみだはなみづどろみづとなつのひかりで出来てゐる頬 摂津
04:時雨どきメールを待っている孤独アールグレイの葉がひらくまで ベティ
05:ねえ何か消えてしまった気がするの さわさわさわと霧雨の降る ゆらゆら
06:相ふるることなく過ぎし歳月よ朝の梔子露を宿せり さよこ
07:日照雨の影つちに日照雨が触れんとするときにもつとも濃くなりて消ゆ 摂津
08:天地を遥かに巡りて生かさるる我も一粒 何処に降るとも ゆらゆら
霊(たましい)が雨を戴いているということ
09:オルゴールバージョン的な雨が降るいつものまちはどこかやさしい ベティ
10:五月雨に暗き真昼間娘との確執抱く身は立ち歩く さよこ
11:雨煙る傘の列の中まさかのえっ娘かと振り返った午後 タカ
12:もぞもぞと桃の木の根が雨あがりの水の苦みをほどきはじめる かめい
13:線線と降りゐる雨は一度の波紋をなして池となりけり 皆瀬
14:もやもやと宿世に絡みあふごとく二人に春の雨が落ちてくる かめい
六七月歌会詠草
題詠歌「雨」
01:捨てられた自転車の雨の雫の錆色の朽ち初めの気動く タカ
02:傷痕のごときを曳きて六月の雨降りをるをただ窓に見つ 皆瀬
03:よだれあめなみだはなみづどろみづとなつのひかりで出来てゐる頬 摂津
04:時雨どきメールを待っている孤独アールグレイの葉がひらくまで ベティ
05:ねえ何か消えてしまった気がするの さわさわさわと霧雨の降る ゆらゆら
06:相ふるることなく過ぎし歳月よ朝の梔子露を宿せり さよこ
07:日照雨の影つちに日照雨が触れんとするときにもつとも濃くなりて消ゆ 摂津
08:天地を遥かに巡りて生かさるる我も一粒 何処に降るとも ゆらゆら
霊(たましい)が雨を戴いているということ
09:オルゴールバージョン的な雨が降るいつものまちはどこかやさしい ベティ
10:五月雨に暗き真昼間娘との確執抱く身は立ち歩く さよこ
11:雨煙る傘の列の中まさかのえっ娘かと振り返った午後 タカ
12:もぞもぞと桃の木の根が雨あがりの水の苦みをほどきはじめる かめい
13:線線と降りゐる雨は一度の波紋をなして池となりけり 皆瀬
14:もやもやと宿世に絡みあふごとく二人に春の雨が落ちてくる かめい
五月歌会休会
四月歌会詠草
題詠歌「光るもの」
01:死にしもの放つひかりの青さかな父の時計を月にかざしぬ ぽっぽ
02:老いたれば光る心よあらまほし肌の張りなど失せし代わりに シナモン
03:ポケットのビー玉ひとつとりだして おなじ光をきっとみている 海賊
04:銀のチョコ選んでいまも森の中みなは大地へ還ったらうに 深森未青
05:すれちがふ言葉あかるき雨に似てハノイからきた少女だらうか しぐなす
06:引退し人恋しさに応接間へ居眠り金メダルはおしゃべりで タカ
07:久方の光し無くは、花の写真などは撮れず、と思ふころかな。 もぐら
08:夕焼けがソーラーパネルにはねるとき通勤電車は速度を落す 治平
09:朝のひかりさしこむ駅のぎんいろの手すり ゆうるりしめりはじめる 美里
10:春ひなた 知らないうちに女房とのけんかに俺は負けてたらしい 摂津
11:感嘆詞はじめに有りて鶯の囀りながしひかりの中に さよこ
12:結び目に針を差しこみほどきゆく春の背中は曲線ばかり 希理子
13:落日を見れば羽ばたきたくなるのペンギンも蛾もうすばかげろふも かめい
14:てのひらのまろきぬくみよ君と飲む林檎紅茶の淡きかがよい ゆらゆら
15:味醂とふ言葉にどこか艶消しの光を感じゐる春の宵 皆瀬仁太
16:機上より目に飛び込みし山桜見送る人の輝きに似て シナモン
17:のびやかに〈雨〉軒さきディスクたたいてる しゃららんソラはつぶつぶのおと 美里
18:鶯の明るい響き起きる朝いちどは姿みてみたいかな 海賊
19:遠峰の雪消えにければ、久方の光の春となりにけるかな。 もぐら
20:山道の上り下りを行き交うてヘッドライトは恋愛遊戯 治平
21:照らされて眠るがごとき白き背よ 少女が不意に腕を伸べたり ゆらゆら
22:愛といふ言葉なんかにした愛の、電飾の木のやうな明るさ 摂津
23:掘りたての筍積みて荷車の去り行く方へ視線のばせり さよこ
24:どこまでもころがつてゆく水滴の 世界はだつて防水クロス 希理子
25:脳の奥処に雲母のごとく光りゐむ父の背に見し星の記憶の 皆瀬仁太
26:久住山にふたりが残したけもの道ではきつねが風を追ふ季節です かめい
27:日が昇り逆光のたわむれは立つ親子2体を黒焦げにする タカ
28:ビルが建つとふ空き地には遺失物めいて眩しきたんぽぽの花 しぐなす
29:金髪の神にあくがれ鉤十字こころに抱きてじふろくなりき 深森未青
30:買い替える防災頭巾は星の柄あかるきものはときに痛まし ぽっぽ
三月歌会詠草
題詠歌「動物」
01:人間の嫁にはえ成らぬ身がゆゑに、ただ丸まりて抱かれゐるなり。 もぐら
02:人間にキスして見れば、肌臭きこと、我が息も絶えむとするなり。 もぐら
03:ソファーにてワン公2匹春はあけぼのなんてのたまうようにして タカ
04:ソファーにてワン公2匹横になりわれは新聞床にひろげて読む タカ
05:もぐりこむひまわり畑は片羽のアゲハ咲く東京パノラマ 美里和香慧
06:地下街と地上隔てる石段にリード引きづる犬の座れり さよこ
07:鳥の名を教えてくれる指先の白さよ何を殺して来たの ぽっぽ
08:全篇が馬鹿らしかつた小説の謝辞まで読んでゐる春の夜 摂津
09:気障りな癖ほどなぜかよく似てる 飼われてるのは犬か私か ベティ
10:にがあまいはるのつむじかぜふわふわとくしゃみをすればこねこのたんご 美里和香慧
11:子犬との別れに耐えるブリーダーでありし昔を知る人ぞなき さよこ
12:父を知らぬ猫を抱けばそよそよと髭は動かぬ風を呼びおり ぽっぽ
13:春あかつき蛞蝓たちの這ひ跡にてらてらと大き交点のあり 摂津
14:悪夢喰う貘に見放される夜は虎よ棲むべし我がたましいに ベティ
二月歌会休会
正月歌会詠草
題詠歌「二首一組」
01:ひとひらの絵葉書に乗る時間なり阿蘇より君が送りくれしは ゆらゆら
みかんのような夕日が落ちるという空を見に行こうよねお結び持って
02:夜長には枝毛ばかりが目立ちすぎ......丸まる背中襲いに来てよ 美里
夜長には深爪目立つ赤々く......丸まる背中襲いに行くよ
03:我し若し混沌ゆ生れしものにあらば、再び混沌の底に沈まむ。 もぐら
我し若し空より到りしものにあらば、再び空の高みに昇らむ。
04:なんとなく面白かつた我が夢に眠田(ねむりだ)四郎が起きていたこと 皆瀬
そしてまた眠れなかつた青白き背をもつ蟹がうずくまりゐて
05:ビル地下のうしろめたさが心地良いシャンパン揺らす電波圏外 ベティ
「何してる?」「今どこ」ばかり叩くゆび 本当は僕が呪縛されてる
06:目移せば窓越しの四角い海は記憶にも無い母の羊水と タカ
息苦しくも無く育つ生命を思うだけで理由も無く熱くなる
07:夕空に羽根きしませて飛ぶ君を追ひかけるための翼がほしい しぐなす
わがつばさ冬夕焼に染まるときあなたを抱く腕(かひな)がほしい
08:色とふを形にせむとする人の、移ろひ易き心悲しむ。 もぐら
色とふは形にあらず、光なり。しばしも止まるものにしあらねば。
09:スプ−ンに口あくる母よ 兄とわれに英語を教えくれましし母 さよこ
整然と母の箪笥に残りたる幾たび水をくぐりし下着も
10:秋の風吹くころ祖父はたのしげに喧嘩相手の健在を言ふ 皆瀬
砂紋のごとき皺うかべつつ破顔する祖父に供へる柿の実ふたつ
11:モルヒネを点滴されて玩具乞ふ母は童であれば泣きつつ 摂津
老い母の頭を撫でてゐる 吾の目を見て父さんと呼びくる母の
12:日が暮れて往来をテ−ルライトは皆赤く一筋になり染めて タカ
静脈の流れみたいに帰る先は小さき子の鼓動掻き混ぜに
13:ゆっくりと滑らぬように湯に入れる父呆けしてより朝の日課に 治平
杜氏たりし父の腕の力瘤幼の憧憬今は小さく
14:いのちより大事なものの二つ三つありて楽しき春の宵かな ゆらゆら
おかめひょっとこ賀状に捺しつつほのほのと嫁に行くのもいいかと思う
15:カタカナでしか愛せない秋葉原の冬青空に乾く稲妻 しぐなす
新宿の空にしたたる寝待月ああ誰かひらがなで殴って
十二月歌会詠草
題詠歌「音を詠みこむ」
01:交りし胡蝶の精の産みにけるうじ虫うじ虫、そよそよと鳴る。 もぐら
02:さらさらと若葉ふれあふ音に似てけふ新しきトレンチコート 皆瀬
03:戻りくること疑わず見送りし子の靴音も今はまぼろし さよこ
04:テレビ消す急に空っぽな部屋になり流れ込み来る夕焼けとろけて タカ
05:ぷっぷかぶっぷか靴をならして君がくるそら色の空ひきつれて ぱふ 美里
06:またひとり子どもが死んで冬雲の連なる先を舐める海神(わだつみ) ぽっぽ
07:まどろみの淡いひかりに3Bの鉛筆ころがるあたたかい音 しぐなす
08:機嫌の悪き君のキャベツの千切りはもう俎板の音ばかりする 皆瀬
09:杵搗き音 親・孫の声溢れしめ 生家はにわかに活気づきたり 治平
10:留守電の声消さざれば亡き友は今日も朗らに転院を告ぐ 摂津
11:血の文字の事故の痛みやそのまんまの言葉で膨らむ一年の日記 タカ
12:オルゴール最後の一音を眠らせて櫛歯わずかに撓みたるまま ゆらゆら
13:心字池に音せぬほどに小雨落ち西方寺庭苔千古に還る 治平
14:深海の魚のように滑らかに夜を跨ぎて猫は沈みぬ ぽっぽ
15:窓枠をかすかにゆする風の音を時には死にたる子の手と思う さよこ
16:母を恨みし日々もありたり我が窓を一夜揺らして冬雷の去る ゆらゆら
17:面識のなき黒猫とみつめあふギギギギギギと音立つるほど しぐなす
18:ちりりんるるん ちりりりん 君と僕 鳴るなる鼓動はありがとうとう 美里
19:夜さりにはみなかねの音そよと聞きて、我精霊と交はらむとす。 もぐら
;自由歌
20:繋がれてゐる安寧よ電柱はいづれも少しかたむいてゐて 摂津
十一月歌会詠草
題詠歌「匂いを詠みこむ」
01:薫煙剤にまかれて落つる蚊のごとく戦火にぽとりぽとりゆふやけ 皆瀬
02:山桜もみぢす強く口中に血の味せぬが不思議なくらゐ 摂津
03:七人と闘いし身を待つ妻は手に消臭スプレー 我は生ゴミか 治平
04:焼きたてのケーキの匂い纏いつつ男は指のリングを外す さよこ
05:空港に空港毎のにほひありて、また我異国に来たりし、と思ふ。 もぐら
06:あめのにおいにあいたくてきみのいえ ぶらうんしゅがーかりかりゆくよ 美里和香慧
07:陽の匂い濃き君なればその胸を幾たび恋いて迷いし日々よ さよこ
08:高気圧の匂ひだらうかガラス瓶こなごなに割る音が放つのは しぐなす
09:鉢植えのバジルを愛でる昼下がりパスタ日和はひなたのにおい ベティ
10:木犀の香の、しりあひと会釈したあとの沈黙みたいな重さ 摂津
11:ただいまの代わりに鼻をすり寄せる猫は夕陽のにおいをさせて ぽっぽ
12:色かほり失せしをなほも人と言ふは、さすが秋こそ悲しかりけれ。 もぐら
13:ストーブは冬のはじまり指先をかざせば冬のにおいがしたり 小鳥
14:ワインにはちょっとうるさい私よと香水揺らして絶句した君 タカ
15:ふゆのにおいひきつれてどあにたつひだまりのかたまり きみのこえ 美里和香慧
16:わがものにならざるままに吹き抜ける金木犀のきんいろの風 しぐなす
17:しづけさにめざむる朝(あした)ふるさとはただ渾渾(こんこん)と梅のにほひて 皆瀬
18:研ぎ師屋を継がず今宵もみたらしのにおいを抱え子は帰りくる 治平
19:原稿の上ペンの切れ味悪く葉巻くゆらし思考の刃砥ぐ タカ
20:夕立のようなあなたの汗を吸う土になるのはいつも切ない ぽっぽ
21:桜桃のくずれるにおい舞妓から芸妓にかわるおんな盛りの ベティ
十月歌会詠草
題詠歌「色の名を詠みこむ」
01:万国旗はためく下のグラウンドに赤白青黄の帽子が競う 治平
02:なんとなく二人の仲をたとえれば赤と白とがとけてゆくロゼ るり
03:縁日に売られるいのちつつましく和金の赤はかなしく燃える ベティ
04:わたくしは透けていますか黄昏を丸く沈めて猫の瞳は ぽっぽ
05:紅梅のいと紋浮きたる葡萄染の御小袿、召せる君はも。 もぐら
06:幾国の豆の茶色の粉まみれ使い古しのコ−ヒ−メ−カ−よ タカ
07:はつなつのエスカレーターの底にある地下鉄はぎんいろの匂ひ しぐなす
08:秋青空 妻に愛など囁いてみたい気がしてしまふ気がする 摂津
09:爪染めるおしろい花の紅は母恋うる色まだらに哀し さよこ
10:をさな子は青き蜜柑のにほひしてわが惑星を吹き抜ける風 皆瀬
11:桜(はな)咲きぬ 春は桃色葉月すぎ紅さす秋と白き雪着て るり
12:満員の電車の中で金髪は立ちたる銀髪無視してお化粧 治平
13:梅に蝶、鳥飛び違ひたる小袿の白きに、逢はじと思はざりけり。 もぐら
14:うす青き煙草のけむり真夜中の時計の音に揺れて消えゆく ぽっぽ
15:この秋はなにかおかしい紫陽花がホットピンクで停滞してる ベティ
16:妻の焼かれた灰色の骨砕く何か語るみたいなその音 タカ
17:湯上りの体映せば身の欲の未だに青き光を放つ さよこ
18:中山みさ江といふ初恋のありしこと夏の終はりの風あかね色 皆瀬
19:火葬炉の扉を出でてにんげんは白じろ遠き荒野となりぬ しぐなす
自由歌
20:見つめをれば太陽のみは色彩に満ちていよいよ出口の如し 摂津
九月歌会詠草
題詠歌「履き物」
01:風の色白きたそがれポストまで歩めば足にサンダル重し さよこ
02:母は皆人並みに育てよと子の手ひきポックリポックリの七五三 タカ
03:うつけなる我とは言へど、まろき月の夜には如何なる沓脱ぐらむか。 もぐら
04:スリッパにも味の違いがあるらしく子猫は青きスリッパを咬む ぽっぽ
05:ブッチャーの凶器シューズのつま先のまがまがし夜にさそり固めだ すんつう
06:パタパタタカンカンカックン踵より一拍遅れてミュールのぶざま たらこ
07:スカートの裾を動かす風ならで恋する靴はスキップ ステップ るり
08:水たまり虹に飛びこむ長ぐつの楽しげなほど残酷な赤 ベティ
09:六〇年前学徒の兄は新調の靴履き夏の朝一瞬に消えた 治平
10:分るわつて言葉の、なんか雨の日のスリッパの底みたいな感じ 摂津
11:それでも君が大好きだつたあの秋に高くけりあげたるスニーカー 皆瀬
12:憧れは寸先の宙(そら)ポアントのただ一点を地に繋がれて ゆらゆら
13:砂浜に紅きサンダル残りたり 消え行く虹に足をかけしか さよこ
14:うなぎ裂かれて焼かれ涙の雨の帰り道坊さんの足袋染みて タカ
15:花の色の女踊りの下駄先の揃ひ、やっとなー、やっとやっと。 もぐら
16:シロタビと呼ばれし猫がやって来てモモに変わりぬまだ返事せず ぽっぽ
17:恋すれば草鞋屋我を忘れをり割れても末になどとのたまふ すんつう
18:木曽ねずこ下駄がかつこん吊り上げる甚三紅(じんざもみ)なすをんなの踵 たらこ
19:歩く日の待ち遠しさに買い求む靴を履かせて今日は記念日 るり
20:危うげにかしぐ木靴のピルエットもうひとひらのためたいもなく ベティ
21:彼が姉にプレゼントした赤い靴シンデレラみたい私にぴったり 治平
22:ゴム長は古いと陰が濃うなったり風を吐いたりするものなんよ 摂津
23:気まぐれな父に買われし駒下駄はくるぶし蹴つたと焼かれてしまひぬ 皆瀬
自由歌
24:くっきりと やがておぼろにほつれゆく飛行機雲よ恋のごとかり ゆらゆら
八月歌会詠草
題詠歌「ゆめまぼろし」
01:落葉焼く煙り昇りて消ゆる空病得る我羨み仰ぐ 晃一
02:夢ならずまぼろしならぬ乳房とふ、熱きをけふは知りにけるかな。 もぐら
03:八月 日照雨(そばえ)鮮やかなる午後に逢いし人なり悍馬のごとき ゆらゆら
04:知られれば妻に刺さるるだらう嘘なんかないから歌にもしない 摂津
05:杉薫る室の八嶋の糸遊は今も艶めく夢幻(むげん)のけぶり 晃一
06:人の世は夢かうつつか天の河流るる星に願ふまもなく るり
07:手をつなぐこの一瞬を光らせて海風は秋来ぬと告げおり ぽっぽ
08:自らの排泄物を手掴みで食う老けた姿演じるように タカ
09:散々に我を打ちたる驟雨より生ぬるかりき君の接吻 ゆらゆら
10:砕け散る夢や浜辺の白砂に大岩なりし日の名残りみゆ るり
11:校舎裏きらきら星の鉄琴を梯子につかめ らら♪流れ星 ベティ
12:君に逢う夢を見たのはシャンプーをシトラスブーケに替えてみたから すんつう
13:金色のクレオパトラのペンダント付けし乙女に逢うたは夢か 治平
14:蒲公英の綿毛にのりてかの夏の道に立てよと声の囁く さよこ
15:花鯉は風に鳴りつつ泳ぎをり軒端に夏の午後白くして 皆瀬
16:俺の胸で眠る子の手に深々と俺が包まれゐたる夏の夜 摂津
17:炎天下二時間待ちのコースターみんなだまされたいひとばかり ぽっぽ
18:ロトくじの数字六つが当たりをり2億が我が手に そして目覚めた 治平
19:まぼろしと呼ぶには甘くほろ苦く失恋の日のカフェ・マキアート ベティ
20:ベットより身を起こしたりうす青き抜け殻さらさらシーツに残して さよこ
21:ふつふつと悲しみの夢ありつれど、覚めてもまぼろしにてはあらざり。 もぐら
22:そんなにむかしのことぢやあないさ空へむかふ夜汽車で猫が目を細めをり 皆瀬
23:うたた寝の夢にコスモス揺れをるは頬を涼しき風撫でるらむ すんつう
24:あきら めていた40の娘の花嫁姿やはり夢だからっぽの朝 タカ
自由歌
25:この国はどうなったのだ不公正けじめも亡くす哀しや愛ほしや 東風
七月歌会詠草
題詠歌「果物」
01:いちごとは、くれなゐならず露ならず、君が心の珠とこそ思へ。 もぐら
02:おそらく君を好きだつた君が越しし日のぼんたんあめのやうなゆふやけ 皆瀬
03:さそり座の心のあたり熟れすぎたマンゴーの実はじゅると溶けゆく すんつう
04:ひもじき日思ひて残す柿の実にピーヨピーヨと去らぬひよどり 晃一
05:剥く前に鼻孔くすぐるリンゴの香じっと見つめる味はいかにと 長谷俊
06:まな板を我が身の色に染めながら生きて居るわとルビーの主張 るり
07:われは待つ日影は移ろいテ−ブルの葡萄光り別れの設定 タカ
08:割りたての柘榴種ごと噛みしめる おきてやぶりの恋の苦さだ ベティ
09:甘夏の匂へる指を汚れし、と口にふふめり 息詰めて見つ ゆらゆら
10:鬼を呼ぶ枕詞のないことを悲しみて熟れし柘榴を齧る ぽっぽ
11:三年を経て寝室の片隅にしだいにすえてゆくラフランス 皆瀬
12:手のなかの林檎むきたり未来より過去ながき身の青き服着て さよこ
13:重く実ったリンゴ持つわれの胸はニ−トの息子はかりかねてる タカ
14:睡魔来て古文書の調べ進まざり辞書を閉ざして冷やし西瓜食む 晃一
15:西日さすあなたの部屋に食べさしの白桃あるを言わで別れし さよこ
16:足元を見ればつぶれたさくらんぼ無駄と知りつつ手鏡を見る るり
17:顛末を尋ねる妻と末のみを答へる子との午後 あんず煮ゆ 摂津
18:凍らせたバナナスティック舐める舌おさなくもあり淫靡でもあり ベティ
19:桃一果灯りておらむ 終バスに揺られて戻る姉の掌 ゆらゆら
20:蜜リンゴ冷えてバリンと頬ばればいかつい顔の口元ゆるむ 長谷俊
21:無花果の紅き果肉の静けさよ子を失いし母の乳ほど ぽっぽ
22:無花果はみどりの雨にそぼちつつ蝉の鳴く音のなどか恋しき すんつう
23:柚子と言ひて、初冬の芳しき香り思ふ我はし、子らに侮られけり。 もぐら
自由歌
24:夕日 突然背骨の奥で僕の死がほのぼのとしてあたたかかつた 摂津
六月歌会詠草
題詠歌「水・無・月」
01:このことは言うべからざると水無月の雨だれ土にしみ込むを見つつ 治平
02:水無月の風は重たい 裏山に埋めた雀を溶かす夕焼け ぽっぽ
03:忘れ難きことは十指に余りたり水無月の雲赤々として さよこ
04:水無月の花の白しや、病みてゐてなほ美しき人が如くに。 もぐら
05:おぼろげな白き満月闇に浮き涼みの路地に縁台ありき 晃一
06:タップから空へと水の噴き出してへび公園に夏が来てゐる 皆瀬
07:道造を読めばページをめくりゆく風さらさらと水無月の晴れ 赤とんぼ
08:駅前に君を待つ午後噴水が小さな虹をつかまへてゐる 皆瀬
09:水無月の稲田に惑ふ白雲のゆれて融けゆく一陣の風 るり
10:ほとばしる蛇口の水に哀しみと怒りながせり朝のうちに さよこ
11:水玉だらけのリンゴを前にしてナイフ持つ娘(こ)が解剖するぞと タカ
12:出勤時行ってくるよと言ふときにコップ一杯水を飲み欲す 赤とんぼ
13:六月は想いでの月真向かいの協会の鐘今日も鳴り来る 治平
14:水が無し、一口呑みて死にたし、と思ひし夜の月赤きかな。 もぐら
15:色彩を喪うほどに月光は煌々としてきみがこいしい ベティ
16:この惑星の水の祭りも時に初優勝のさくらの涙に タカ
17:朝寝なら水の匂いのするおとこ抱いて一輪菫咲くまで ベティ
18:旱魃の白む川原に見えずなりいづくの水に魚ら泳ぐや 晃一
19:月も無き水惑星の夜は明けて宇宙に再び命輝く るり
;自由歌
20:父と子が寝息で話す 山彦が山彦を聴くさみしさに似る ぽっぽ
五月歌会詠草
題詠歌「初」
01:影だけがくきやかに見ゆはつ夏の朝を飛びゐるらしき揚羽の 摂津
02:お初ならば、たよし、ミユンヘンよけれども、天神過ぎてのベコーまた佳し。 もぐら
03:初診料・基本処方料・調剤料・その他諸々/いのちのお値段 ゆらゆら
04:外(と)に出づるときに頬吹く風のあり今日初めてに塾に通う子 赤とんぼ
05:里山の雑木の芽吹きうひうひし孫の香思ひ深く息吸ふ 晃一
06:澄んだ目の深さを探り君の奥 初めて潜れば腹は底無し タカ
07:「あの子とは初期化したんだ」薫る風小学生の初恋終わる 治平
08:初摘みの指すばやくて新緑のグランドピアノ奏でるごとし 鞍良ひな子
09:短冊にわれの短歌を書きくれし母は居まさず初七日を過ぐ 小夜子
10:史上初の一秒が来るあはれまた一秒が来るあはれまた来る 摂津
11:歩き初めの子がみつけいし蒲公英にふれるを撮らんと匍匐(ほふく)の夫が 治平
12:転生のたびに二人はくり返す初めてのキス初めての朝 るり
13:ま昼間のホテル ベッドに腰をかけ初めてなのとつぶやきしひと 赤とんぼ
14:濃く薄くみどり重なり初夏の繭しづやかにわれを包みぬ 鞍良ひな子
15:厨に入り包丁砥ぎて初がつを汝(なれ)と二人の母の日なれり 晃一
16:父親になるのか俺はばうばうと原初の海の微熱思(も)ひつつ 皆瀬
17:初夏の風にのりゆく魂よ カーネーションの白を買いたり 小夜子
18:人の世の波にもまれた浮き舟もリセットスイッチ初期化してみる るり
19:古うたに見れども、今は初子とて小松引くことなきぞ悲しき。 もぐら
20:まあいいか 初物好きの古女房新茶が巡る時を数えず タカ
21:初回分サービスしますなめらかに営業マンは笑み浮かべたり 皆瀬
自由歌
22:見る限りなべて揺れしと思ほえば草舟の如し日本列島 ゆらゆら
23:純白は涙に似たりキタコブシその大粒を手のひらにのせ 長谷俊
四月歌会詠草
題詠歌「化」
01:夢二描くうつろな女の薄化粧膝の黒猫やるせなさそうに 治平
02:血流を増せば消化を助けると 小ダンベル振り散歩が花見に タカ
03:化け「猫」はある「犬」はない、不公平!取り憑かれてもいい あいしてる ベティ
04:白日に素顔晒して歩きたり化けることさえ空しき今日は 小夜子
05:少子化に生まれし子供に罪はなしひとり遊びのさびしき背中 長谷俊
06:衣解きて化粧落とせばゆるゆると呼吸始める如し湯の肌 ゆらゆら
07:若草やふる年月に七変化恋女房も老木となり るり
08:教室に化学反応説くときに大きな欠伸をせし女子生徒 赤とんぼ
09:化くる如く化けぬが如き女きつねの、ひらりと消えし春霞かな。 もぐら
10:液晶に紹介するねと写し出す羽化するか娘よ地震(ない)に遭うごと 治平
11:花衣化けたる並木を携帯で 刹那の流れのひとこまを残す タカ
12:さびしさの液化の果ての湖に羽根をやすめてもはや飛ばざり 鞍良ひな子
13:深奥にさらなる進化いだけるや海は朝日をはねて凪ゐる 皆瀬
14:秘やかに少女はおんなに化けてゆく初潮のころの不機嫌な頬 ベティ
15:褄取りてほそどの走る女将あり化けて居るとは思はざるなり 晃一
16:化け損なひ狸なりける学生ら、大化けし出づる春は嬉しも。 もぐら
17:満開の桜はにがて下腹の辺りずぷりと液化しさうで 摂津
18:紅筆で薄くのばした春色の花びら映す化粧室 るり
19:うつかり不味いとつぶやけば君の顔色が化学反応より激烈に 皆瀬
20:後世(ごせ)になほ化けて出で来むうらみあるひとりの人の名をつぶやきぬ 赤とんぼ
21:しみじみと木の葉の化石割るを見る 落葉となりてなほに生くれば 晃一
22:闇の中を走る悲鳴にひめい上ぐお化け屋敷の束の間永し 小夜子
23:化けきれず場末の酒場にいる蝶をしみじみと見る手荒れの指も 長谷俊
自由歌
24:しんと世を止めて桜咲きにけり逝きにし人の魂もまた ゆらゆら
25:産みしことの誇りもなくて男らはもろき肢体を折りて眠りぬ 鞍良ひな子
三月歌会詠草
題詠歌「はじまり」
01:「また会えますか」(生きていれば)と頷きぬ 初めて父に会いし日は雨 ゆらゆら
02:没年の空白なるもハイフンはそこを示してすでに置かれぬ 鞍良ひな子
03:平静を取り戻すのに七日要り引継ぎ事項をまとめはじめる 長谷俊
04:終わりある人生だから始まりがあるのだ。私も初心に帰ろう。 もぐら
05:朧月浅き夢みし春の夜の明けて現の日に飛び立たむ るり
06:目の濡れてゐるのは霧のせいだよね青き別れは次へのスタート 赤とんぼ
07:君が去る定期異動はさよならを言うためじゃないここがスタート ベティ
08:吊るされたウールソックス駆けたかろ春一番の過ぎるベランダ ころぽっくる
09:ひよどりは庭騒がしく鳴き立てて雛をうながしやがて飛び去る 晃一
10:内示受けほころびそうな細胞を辞令の日までにしゃんと立たせる 長谷俊
11:新しきランドセルを背負いたる「はるか」を見守る視線はいくつ 小夜子
12:あの日きみと口にふふみしマシュマロのとけゆくやうに春がはじまる 皆瀬
13:生まれからスクロ−ル経て魔女ふけてシアトルの城で未婚を詫びて タカ
14:貪りて身に重ねたる芸なれり勘三郎にも寂しさあらむ 晃一
15:鶯の初音聞きたりブラウスにゆるくアイロン滑らしながら 小夜子
16:あっち向くかこっち向くのか歩き始めの吾子、ほらほら、どろんこじゃない! もぐら
17:乳をやり襁褓取り替へ抱きても泣くは悲愁のはじまりなるや 鞍良ひな子
18:出会い別れ人は誰もが涙してそして笑顔を探し始める ベティ
19:一服の緑茶香りて朝の陽の障子にしろき弥生朔(やよいつきたち) ころぽっくる
20:いつの間に春始まりたるや洗顔の水に鋭さ消えゆきし窓 赤とんぼ
21:葉を揺らす春風さへも招き入れふわり羽ばたく限りなき空 るり
22:はじまりは嫌悪にありき右足の中指父に似て長きこと 皆瀬
23:アクセスし蕗のとうたつそこここにそっと独り分数えておさめ タカ
自由歌
24:帰港する船をかこみて海猫の群れ飛ぶを見て歓声上がる キチロウ
25:海を見に単車で駆けるポケットにレモンを入れてわれの如月 キチロウ
26:すでに死を宿すいのちかももいろの爪やはらかに午後をねむれる 摂津
二月歌会詠草
題詠歌「ありがとう」
01:言霊のやそのちまたに魂合へばなる歌こそは和魂ならめ 遥悠
02:忠告をありがたく受け競馬やめ 宦官のさまトイレを磨く タカ
03:合格者らの喜び聴きつつチョコレートの幾片を手にころがせている 治平
04:いろいろと苦しみありて後の現在 逃げない私それでよかった きまりや
いま
05:つれづれに三十一字のやり取りで枝を広げるありがとうの樹 瓢々
06:蛙孫(まご)歌は詠めども行く辺無きいざ寿がんこの場在りしを ひざすわろう
詞書 結社に入らず発表の場が得られたことへの感謝を。
07:晩酌に一品添える記念日はどちらとも無く微笑み返し るり
08:歌会の思はざる読みに戸惑へど混りて学ぶひな鳥なりき 晃一
09:十八の歳まで優等生なりき不良になれど父優しかり 赤とんぼ
10:手術終へ待ちに待ちたる退院が「ありがとう歌会」に連なりにけり 晃一
詞書 二月二日に退院しました。
11:歌ひつつわたくしといふ魂の棲家探して有難く居る 空樹
12:ありがとう記念日ごとの思い出はリボンを掛けて心に仕舞う るり
13:我の他皆わが師なり彼の君も他山の石ぞありがたきかな ひざすわろう
14:ほんのりと底に甘さの残りをり寡黙な夫の淹れたる珈琲 しぐなす
15:この靴とこのラケットに感謝せむ技量高めき2004年は 谷島
16:それぞれに我が戦いを支え来しダンスシューズなり また仕舞いつつ ゆらゆら
17:七年は短くあらねど、ありがたう、ありがたうとのみ思ひゐるかな。 もぐら
18:てのひらの融けゆく淡雪数へをり生れては消ゆる恋おもひつつ 涙涙
19:願わくば出会い別れた万人へ世界でいちばんやさしい言葉 ベティ
20:ヒロ姉と呼びママと呼びお袋と呼びお婆ちやんと呼びし人逝く 摂津
21:ありがとう君と流れた時たちを抱きしめながら凛と歩こう 遊
22:「ありがたう」「いや、こちらこそ」草の実をたらふく食べて飛びたて小鳥 希理子
23:週末は夫の料理堪能しあとでプラごみ静かに分ける 白玉だんご
24:あの夜のリアルタイムの楽屋話のとりとめなきを海と思ひつ 皆瀬
25:明治より平成の世を存える母の手握ればごつごつ硬し 小夜子
26:我がもとを去らんとする君ありがとう1月7日年賀状来る きまりや
27:廃校の梅は咲けれどFTANKAのつぼみ開かず心は春待つ 治平
28:壁破り麻酔から覚めささやきが 胃の切除成り手と手で どうも タカ
29:得たるもの何と言へざるもどかしさ抱へたるまま君と歩みつ 鞍良ひな子
30:ビー玉になつたかつての体温を撫でる日もある ポッケの重み 遥悠
31:胃薬をそっと差し出す部下がいて飲み終えると鳴る始業ベル 長谷俊
32:住み馴れし家を人手に渡す日の庭に紅梅三分咲きたり 小夜子
33:幸せは山のあなたにあれど母上よありがとう私を産みくれしこと 赤とんぼ
34:ありがたう何歩か前を歩きつつおやぢはきつとさう言つたらう 皆瀬
詞書 金婚式だつたのにね
35:クリスマスプレゼントだけは感謝の辞言わせずともよし黒子の親は 白玉だんご
36:並木道わたしの頬の悲しみを隠してくれる花散らし雨 遊
37:沢蟹も小石も千の音階できらめく川のあり春立ちぬ 摂津
詞書 本歌会への謝意を込めて
38:「愛してる」って最近言いにくいけれど「ありがとう」こそ君に似合うよ ベティ
39:誰の上にも等しく注ぐ陽のひかり さしのべし手を透かせ溶かせよ 涙涙
40:ありがたう、と思はぬことなし、酒呑みて交通事故に逢はざりしとき。 もぐら
41:遠からず去らん命をただ見つつ逸らせぬ心は混沌として ゆらゆら
詞書:それでも知り合えてよかったのだろうと思う
42:健康と技量高めき思いあり大つごもりの神酒を飲み干す 谷島
43:むずむずむずうむうむうむうぐるぐるるぽんとうまれてくれてありがと しぐなす
自由歌
44:あなたには逆らうのはもうやめよう降る優しさのすべてを愛そう 空樹
45:あたたかい背中のやうでありました父の膝にて抱きしチェロは 希理子
一月歌会詠草
題詠歌「新春」
01:初詣に並ぶ幼のあんず飴欲しとむづかる 「あんの後にね」 涙涙
02:今年こそ吾がはらからを取戻す決意新たに曙を見ゆ ひざすわろう
03:まどろみて新年の朝むかへたり風のはこべるかげの揺れつつ 皆瀬
04:うまれたての陽は粉雪に煙りつつ確かな朝を世に落としゆく ベティ
05:のどもとを酒の辛さが降りてゆく新春の朝しんと雪降る 谷島
06:幾十万のケータイ光り拝殿に向ひぬ酉年夜明けの神宮 治平
07:元朝の酒に朝日の切っ先を映して我はほろろと酔いぬ 赤とんぼ
08:「末吉」を枝に結んで見上げればまっさらな空まっさらな我 しぐなす
09:松飾しばし見違う竹槍にテレビドラマで小栗巣の段 ひざすわろう
10:土手へ来て初茜待つ子と吾にさやけき春の星夏の星 摂津
11:初雪のうちの新春うぐひすの涙凍れるいとまなからむ すんつう
12:およばねば祈るほかなし新春に 津波は悪戯ぞ そんな神に タカ
13:干支よりも幼児の多き賀状見つ三十路過ぎたる肩を竦める ベティ
14:人の世は移ろふなれば、年ごとに変る春こそめでたかりけれ。 もぐら
15:禁煙の二文字に慣れた書初めは団子に変わるどんど焼きかな るり
16:初富士に電磁波の空背負わせてヒト科の猿の今年はじまる しぐなす
17:新春を重ねし系の因縁か禿げ成す遺伝子捜索願い タカ
18:はつはるの旅券申請するやうな陽射しの中を靴を探しに 希理子
19:ムーミンのやうなる友にいこひつつ新年会の夜は更けにけり 皆瀬
20:庇まで積み上げられし薪の如新しき日々いとほしき哉 空樹
21:我のゐぬ春また人の春ならし、人ゐぬ春に我ゐてさ思ふ。 もぐら
22:年賀状ただ行き交ふの哀しみに元日の夜返事書き初む 空樹
23:入院の我を残して帰り行く妻の新春いかにありなむ 治平
24:人波の途絶えし街に去年の雪淡く残れり正月一日 小夜子
25:奇蹟つて俺たちの子がここにゐて雑煮食つてることだよきつと 摂津
26:竹の葉の影庭石にさゆらぎてけふ元日を君とやすらふ 赤とんぼ
27:歳旦のましろな雪にわたくしの今日の一歩をくつきりつける 希理子
28:初日の出予報外れか初夢かどちらにしてもまだ酔ひ覚めぬ るり
29:新春のラジオに流る筝曲に大和心を呼びさまさるる 谷島
30:うつむいた顔を持ち上げ道を見る今年こそはと、つい早歩き 長谷俊
31:黄梅の芽吹きを聞けば越冬の気合いを入れて新春と言い 瓢々
32:白波を荒くたたせて海よ海 惑はせてゐる燃ゆる初陽に 涙涙
33:元日と定められたる朝に降る雪ほっこりと庭を覆いぬ ゆらゆら
36:塊りとなりたる人の群れいくつ初日待ちつつ遠州灘に 小夜子
自由歌
34:恋ひ恋ひて命短し陽炎の夏ゆらめきて吹き抜ける風 すんつう
詞書 旧作。98年モルジブにて
35:君の目を感じて歩く部屋の中 カーテン越しに日は暮れかかる ゆらゆら
タブで頭 シフトタブ↑